ヤスコのコラム:“貧乏神”なしの「桃鉄 教育版」が小中7000校に無償提供!東大の効果検証で何が変わる?
公開日:2024年5月8日
昨年からSNSなどでじわじわと、一風変わった教材が話題になっています。
それが『桃太郎電鉄教育版Lite ~日本っておもしろい!~』です。
『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』(画像は公式サイトより)
桃太郎電鉄といえば、1988年から今まで幅広い世代に愛されてきたボードゲーム。プレーヤーは鉄道会社の社長となって日本全国の物件を買い集め、最終的に資産を一番多く持っているプレーヤーが勝利するというルール。電車に乗ってすごろくのように各地を巡れるため、旅行気分が味わえるのも人気の理由です。
「桃鉄」の愛称で親しまれたこのゲームが、株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下「コナミ」)から、学校教材して提供が開始されたのは去年のこと。「ゲームをプレイすることは、地理や漢字の学習に役立っているのではないか」などの視点から、ブラウザで使える教材としての開発が行われました。
授業のカリキュラムに合わせて使えるように、次のような機能も追加されました。
- プレイ時間の開始~終了、プレイ人数などを、先生が管理ツールから操作できる
- 北海道、関東、近畿、九州・沖縄など、プレイで学びたい地域が選べる
- 駅のある地域の人口や特産物、特産物や史跡の情報が表示される
- 持ち金が大きく変動しないように「貧乏神」は登場しない仕様
貧乏神といえば……「ボンビー!社長さんのために物件を売ってきてあげたのねん!」などと、大切な物件を勝手に二束三文で売り飛ばしてしまう“お節介”に泣かされた人も多かったのではないでしょうか。あのおちゃめなキャラクターが不在なのは寂しい気もしますが、子どもたちの学びのためにお休みしてもらいましょう(笑)
「桃鉄 教育版」がこれまで導入された中学校などを含む学校教育機関7000件以上のうち、4000校は小学校。これは全国の小学校の約20%に相当するそうです。提供はすべて無償とのことで、コナミさんも太っ腹ですね。
実際の授業風景は学校によってさまざま。ある小学校ではプレイ時間を何回かに区切って、「プレイした地域の魅力」や「このゲームをもっと面白くする方法」などを考えて発表される課題を設けていました。
これにより生徒たちは問題意識を持ってゲームを行うため、地域のことがより深く理解できるようになったと語ります。
ある精神科医によれば、楽しみながらの学習には記憶増強物質ともいわれるドーパミンが放出されるため記憶が定着しやすいそうです。逆に、人に強制されたり嫌々学習したりすると、ストレスホルモンが出て記憶力が減退するとか……。
そう考えると「桃鉄 教育版」を使った授業は、学習の記憶定着のためにも一役買ってくれそうです。また単にゲームをプレイするだけではなく、先生やクラスメイトとの意見交換によって学びを深めていくという点も、今後のIT教育で重要視されることでしょう。
4月24日には、コナミと東京大学大学院が「桃鉄 教育版」の教育的価値の評価を行うために研究を開始したとの発表がありました。今後の導入や普及のための学術的知見を得ることが目的だそうですが、この事例が高い評価を得られれば、今後、楽しみながら学ぶ「エデュテイメント」という考え方が教育機関にもっと広がるかもしれません。