療育とは?|受けるべき子どもの特徴と効果・施設の選び方

公開日:2025年11月10日
更新日:2025年11月10日

「療育とは何をするもの?」「どんな子どもが対象なの?」
このコラムでは、療育(発達支援)の意味や目的、療育によって得られる効果をわかりやすく解説します。また、実際に利用できる施設や相談先、家庭でできるサポート方法も詳しくご紹介します。

療育とは何か?|基本の意味と目的を理解しよう

近年、子どもの「療育」という言葉を耳にする機会が増えた方も多いと思います。
しかし、実際に「どんなことをするのか」「うちの子も対象なのか」といった点は、保護者にとってわかりにくい部分が多いものです。
ここではまず、療育の基本的な意味と、似た言葉である「発達支援」との違い、そしてその目的や重要性を整理していきましょう。

1. 療育の正式な定義と「発達支援」との違い

療育とは、発達に課題を抱える子どもに対して行われる、専門的な支援のことを指します。厚生労働省では「障害のある子どもに対し、日常生活の自立や社会参加を促すための指導と訓練を行うこと」と定義しています。
つまり療育は、単に学習を教えるのではなく、その子の発達段階に応じた総合的な支援を行う点が特徴です。

一方で、「発達支援」という言葉は、療育を含むより広い概念を表します。発達支援は、発達が気になるすべての子どもに向けた関わりを指し、まだ診断が出ていない場合や、軽度の発達特性を持つ子どもも対象となります。
つまり、「発達支援」という大きな枠の中に、「療育」という専門的な支援が含まれている、と考えるとわかりやすいでしょう。

参照:厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」

2. 療育の目的 |自立・社会参加を目指す支援

療育の一番の目的は、子どもが将来自分らしく生活できる力を身につけることです。
日常生活に必要なスキルを少しずつ練習し、やがて家庭や学校、社会の中でスムーズに行動できるようになることを目指します。

例えば、言葉で気持ちを伝える力を育てることで友だちとのトラブルを減らしたり、生活リズムを整えて毎日の登校がスムーズになったりします。
こうした小さな積み重ねが、やがて「将来の就労」「地域社会での自立生活」へとつながっていきます。
また、療育では子どもだけでなく、保護者への支援も重視されます。親が子どもの特性を理解し、適切な関わり方を学ぶことで、家庭全体が安心して過ごせる環境を整えていけるのです。

3. 早期療育が重要と言われる理由

療育は、早く始めるほど効果が高いとされています。
特に未就学児期は脳の発達が著しく、この時期に適切な刺激や支援を受けることで、言語や運動、社会性の土台がしっかりと育ちます。
例えば、3歳児健診で発達の遅れや気になる行動が見られた場合は、できるだけ早く相談を始めることが勧められます。

小学校に入学してからでも療育は効果がありますが、早期に始めることで支援の選択肢が広がり、集団生活への適応力を高めやすくなります。
「少し気になるけれど、もう少し様子を見よう」という判断で先延ばしにしてしまうと、後々の困りごとが大きくなることもあります。
不安を感じた時点で、まずは自治体や専門機関に相談することが大切です。

参照:厚生労働省科学研究成果データベース「発達障害の子どもを早期発見・早期支援することの意義」

4. 療育を受けた子どもに見られる変化の例

療育を続けることで、子どもの行動や感情表現に少しずつ前向きな変化が現れます。
例えば、言語支援を受けた子どもが「ありがとう」「いやだ」と自分の気持ちを言えるようになり、周囲とのトラブルが減ったケースがあります。
また、運動面では手先が器用になり、服の着替えや食事の自立がスムーズになることもあります。

さらに、集団活動を通して人との関わり方を学ぶことで、学校や地域での居場所が広がります。
こうした変化は一朝一夕には現れませんが、子ども一人ひとりに合わせた支援を根気強く続けることで、確実に成長が見えてくるものです。
保護者にとっても「できなかったことができるようになった」という経験は、大きな安心感と自信につながります。

療育で得られる5つの力|具体的な変化をイメージしよう

療育は、子どもの困りごとを解消するだけでなく、「できること」を少しずつ増やしていくための支援です。
ここでは、療育を通して育つ代表的な5つの力を紹介します。それぞれの力が伸びることで、日常生活や学校生活がどのように変わるのかをイメージしてみましょう。

1. 言語・コミュニケーション|気持ちや考えを伝えられる力

言葉やコミュニケーションは、子どもが周囲と関わる上で欠かせない力です。
療育では、言葉を理解する力と自分の気持ちを伝える力を少しずつ伸ばしていきます。
例えば「ありがとう」「いやだよ」など簡単な言葉が使えるようになると、トラブルを防ぐことができ、友だちや先生との関係もスムーズになります。

言葉だけでなく、ジェスチャーや視線など非言語的なコミュニケーションを活用する練習も行います。これにより、感情を適切に表現できるようになり、他者とのやり取りが楽しくなるきっかけにつながります。

2. 認知・行動|集団生活で必要な理解・行動力

集団生活では、ルールを理解して行動する力が必要です。
療育では、指示を聞いて行動する練習や、順番を守る・待つといった社会性の基礎を育てます。
この力が身につくことで、学校や園での活動にスムーズに参加できるようになります。

また、注意力や記憶力を高めるための遊びや課題も取り入れ、考える力を段階的に伸ばしていきます。
例えば、カードを使った記憶ゲームやごっこ遊びを通して、楽しみながら理解力と行動力を育てることができます。

3. 運動・感覚|身体の使い方や感覚を調整する力

体をうまく使えない、感覚の過敏さや鈍感さがある__これは日常生活の困りごとにつながります。
療育では、粗大運動(全身運動)微細運動(手先の動き)の両方をサポートします。
例えば、バランスボールや平均台を使って体幹を鍛えたり、ハサミや折り紙を使った作業で手先の器用さを高めます。

また、音や光、触覚に対する感覚過敏や鈍感さにも配慮したプログラムを行います。
感覚を心地よく調整できるようになることで、着替えや食事などの日常動作がスムーズになり、ストレスが減少します。

4. 健康・生活習慣|生活リズムを整え、元気に過ごす力

健康な体と安定した生活リズムは、すべての学びの土台となります。
療育では、睡眠・食事・排泄などの基本的な生活習慣を整えるサポートも重視します。
例えば、決まった時間に眠る・起きる練習をしたり、偏食を少しずつ克服できるよう工夫を重ねます。

これらの習慣が整うことで、心身の安定につながり、日中の活動に集中しやすくなります。
学校や園に安心して通えるようになる大きな一歩になるでしょう。

5. 対人関係|他者と関わり協力する力

人との関わりは、子どもの成長に欠かせない経験です。
療育では、集団活動やごっこ遊びを通じて、相手の気持ちを想像しながら行動する練習をします。
「順番を守る」「貸して」「ありがとう」など、対人関係の基本となるやり取りを少しずつ学んでいきます。

こうした経験を積み重ねることで、友だちや先生との信頼関係が築かれ、集団の中で安心して過ごす力が育ちます。
対人関係のスキルは将来の学校生活や社会生活にも直結する、非常に大切な力です。

療育を始めるまでの流れと施設の選び方

「療育を受けたい」と思っても、どこに相談して、どのような手続きを踏めばよいのかはわかりにくいものです。
ここでは、療育を始めるまでの基本的なステップと、実際に利用できる施設やサービスについて解説します。初めてでも安心して進められるよう、具体的な流れをイメージしていきましょう。

1. 相談先と初回相談の流れ

療育を始める最初の一歩は、「相談」です。
子どもの発達に気になる点がある時は、まず市区町村の福祉課や保健センターなど、地域の行政窓口に連絡しましょう。ここで初回相談の予約を取り、子どもの発達や行動について詳しく話を聞いてもらいます。

相談後は、発達支援センターや児童発達支援センターでの専門的なアセスメント(発達評価)につながることが多いです。
その結果をもとに「どのような支援が必要か」「どの施設が適しているか」を一緒に考え、サービス利用計画書を作成していきます。
初めての手続きは不安もありますが、担当の相談員が一歩ずつサポートしてくれるので安心です。

2. 施設・サービスの種類

療育にはさまざまな形態があり、子どもの年齢や課題に応じて選ぶことが大切です。ここでは代表的な施設・サービスを紹介します。

児童発達支援センター

未就学児を中心に支援を行う総合的な施設です。
発達の評価や専門的なプログラムを提供するほか、保護者へのアドバイスや地域の関係機関との連携も担います。
療育を始める際の拠点的な役割を果たします。

児童発達支援事業所

保育園や幼稚園に通う未就学児が対象です。
個別指導や小集団活動を通して、言語・運動・社会性などを育てていきます。
週1回から利用できるケースも多く、家庭生活との両立がしやすいのが特徴です。

放課後等デイサービス

小学生から高校生までが対象のサービスで、放課後や長期休暇中に利用できます。
学習支援やコミュニケーションの練習を行い、学校生活を補完する役割を担います。
子ども同士が関わる機会が多く、集団での成長が期待できます。

発達支援センター、療育センター

発達に関する総合相談窓口の役割を持つ施設です。
発達検査や専門家によるカウンセリングが受けられ、複数の機関と連携した支援計画を立てていくことができます。療育の入り口として利用するケースが多いです。

医療機関(小児科・児童精神科など)

発達や行動に大きな不安がある場合は、医師による診断や治療が必要になることもあります。
医療機関と療育施設が連携することで、より効果的な支援が可能になります。

自治体の相談窓口(市区町村の福祉課など)

最初の相談窓口となる場所です。
発達支援サービスの利用申請や、施設紹介、手続きに必要な書類の案内を行ってくれます。
地域ごとに制度や流れが異なるため、必ず確認が必要です。

3. 手続き・利用条件・費用の目安

療育サービスを利用するには、受給者証と呼ばれる福祉サービス利用のための証明書が必要です。
これは自治体に申請し、審査を経て交付されます。申請時には、子どもの発達に関する書類や医師の意見書が求められることがあります。

費用は、国や自治体の補助があるため、自己負担は1割程度が一般的です。
ただし世帯所得に応じて上限額が設定されており、実際の負担は多くの場合数千円〜1万円前後に収まります。
まずは自治体に相談して、具体的な条件や手続きを確認しましょう。

参照:千代田区「児童福祉法による障害児通所支援サービス」

4. 見学・体験時にチェックしたいポイント

施設を選ぶ際は、実際に見学や体験利用をすることがとても重要です。
見学時には、以下のポイントを確認しましょう。

・スタッフが子どもに丁寧に接しているか
・子どもが安心して過ごせる雰囲気かどうか
・活動内容が子どもの特性や年齢に合っているか
・保護者との連絡体制や相談のしやすさ
・施設内の安全性や清潔さ

見学の際に「ここなら通わせたい」と感じられるかどうかが、最終的な判断の目安になります。
また、複数の施設を比較して検討することで、より子どもに合った場所を見つけやすくなります。

家庭でできる療育のサポート

療育は施設での活動だけで完結するものではなく、家庭での関わり方がとても重要です。
施設で学んだことを日常生活でも繰り返し練習することで、子どもの成長が加速し、スムーズに定着していきます。
ここでは、家庭で意識して取り組みたいサポート方法を5つの視点から解説します。

1. 療育で学んだことを家庭でも活かす方法

療育で身につけたスキルは、家庭での実践によってさらに定着します。
例えば、療育で「片付けの手順」を学んだ場合は、家でも同じ声かけや手順を意識して繰り返しましょう。施設と家庭で言葉や方法が一致していると、子どもが混乱せずに学びを吸収できます。

また、スタッフから教わった具体的なサポート方法をメモしておき、家庭で活用することも大切です。
「どう声をかければいいか」「どの程度手伝うか」を家族全員で共有することで、一貫性のある支援が可能になります。

2. 成功体験を一緒に喜び、モチベーションを高める

子どもが「できた!」と感じられる経験は、次の挑戦への大きなエネルギーになります。
療育でできるようになったことや、家庭で小さな成長が見られたときは、一緒に喜ぶことを大切にしましょう。

例えば、「自分で服を着られた」「ありがとうと言えた」など、ほんの小さなことでもすぐに褒めて認めることで、子どもの自信につながります。
「頑張ったね」「前より上手にできたね」という言葉は、子どものモチベーションを高め、療育を続ける力になります。

3. 叱るより「待つ」「見守る」を意識する

子どもが失敗したときやうまくできないとき、つい叱りたくなることもあるでしょう。
しかし、療育では「待つ」ことが最大のサポートになる場合があります。
焦らず見守ることで、子どもが自分で考え、行動するチャンスが生まれるのです。

どうしても声をかける必要がある時は、否定的な言葉を避けて短く具体的に伝えることがポイントです。
「違うよ!」ではなく「もう一度、ゆっくりやってみようね」といった声かけに変えるだけで、子どもの安心感は大きく変わります。

4. 安心できる家庭環境を整える工夫

家庭は、子どもにとって最も安心できる場所であるべきです。
生活リズムやルールを整えることは、子どもが落ち着いて過ごすための基盤になります。
例えば、寝る時間や食事の時間を決めて安定させる、片付ける場所をわかりやすくする、などの工夫が効果的です。

また、感覚に敏感な子どもの場合は、音や光などの刺激を減らすことも重要です。
静かに過ごせるスペースを作ったり、強い照明を避けるなど、子どもが安心して過ごせる環境づくりを心がけましょう。

5. 保護者自身の気持ちを整えるセルフケア

療育に取り組む中で、保護者自身が疲れや不安を抱えることも少なくありません。
親が心身ともに元気でいることは、子どもへの関わりにも直結します。
そのため、保護者自身のセルフケアも意識して行いましょう。

信頼できる人に気持ちを話す、短時間でも自分の好きなことをする、行政や専門機関の相談サービスを利用する__こうした工夫が気持ちを軽くします。
「親が笑顔でいること」は、子どもにとって何よりの安心材料となります。

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まとめ

療育は、子どもの困りごとを解消するだけでなく、「できること」を増やして自信や安心感を育むための支援です。
早めの相談と適切なサポート、そして家庭での温かい関わりが、子どもの成長を大きく後押しします。また、施設と家庭が連携しながら、一歩ずつ確実に積み重ねていくことが、将来の可能性を広げる鍵となります。
迷ったときは一人で抱え込まず、まずは地域の相談窓口に相談することから始めてみましょう。

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