ADHDの子が宿題に取りかかれない理由と対策法について

公開日:2025年2月3日

このコラムでは、ADHDの子どもが宿題に取りかかれない理由について解説します。
また、ADHDの子どもに宿題をさせるためのサポート方法や、親がやってはいけないNG行動についてもご紹介します。宿題をやらないお子さんにお悩みの方は、是非ご一読ください。

ADHDの子が宿題に取りかかれない4つの理由

ADHDを持つ子どもが宿題に取りかかれない理由は単純ではありません。これは、意志が弱いとか怠けているといった問題ではないため、保護者が「なぜできないのか」を正しく理解することは、子どもをサポートする上で非常に重要です。
ここでは、具体的な理由を4つ挙げ、それぞれを深掘りして解説します。

1. 嫌なことを後回しにする癖がついている

ADHDの子どもは、嫌なことや難しいことを避ける傾向が強く、これには脳の働きが関係しています。
ADHDの人は、行動を動機付けるための脳内の報酬系(人が何かを達成したときや快感を得たときに働く脳の仕組みの一部)が通常より弱いため、目先の楽しいことや簡単なことを優先してしまいます。
一方で、嫌なことや難しいことに向き合うには強い意志やエネルギーが必要で、それが続きにくいのです。

例えば、「宿題をやらなければいけない」という状況であっても、目の前に好きなゲームや動画があると、ついついそちらに注意が向きがちです。また、「後回しにしてもなんとかなる」という経験が積み重なることで、後回しの習慣がついてしまうことも少なくありません。
結果的に、宿題をやる時間が足りなくなり、「今からやっても間に合わない」と諦めの気持ちを持つようになることがあります。

2. 学校の授業が理解できてない

ADHDの子どもにとって、学校の授業中に集中を維持することは非常に困難です。
授業中に注意が散漫になり、必要な情報を聞き逃してしまうことがよくあります。その結果、宿題に取り組む際に「何をどうすればいいのかわからない」という状況に陥りやすくなるのです。

さらに、授業内容が理解できていない状態では、宿題に対する抵抗感が増し「やっても無駄だ」「どうせできない」と感じるようになります。これが積み重なると、宿題自体へのモチベーションが低下し、宿題に取りかかれなくなる悪循環に陥るため注意が必要です。

3. 「やりたいこと」と「やりたくないこと」の切り替えが苦手

ADHDの子どもは、好きなことや興味のあることに集中する力が非常に強い一方で、その活動から別の活動へ切り替えるのが非常に苦手です。
これは、ADHDの特性の一つである「切り替えの難しさ」が原因です。
例えば、ゲームをしている状態から勉強モードに移行する際に、他の子どもよりも多くの時間とエネルギーを必要とします。

また、好きなことに夢中になっている時間が長いと「やらなければいけないこと」がどんどん後回しになり、時間がなくなってしまうこともよくあります。
ですから、保護者が「そろそろ宿題をしなさい」と指示しても、子ども自身がなかなか気持ちを切り替えられず、最終的には怒りの感情から、子どもの好きなものを取り上げることになってしまうことも少なくありません。

4. 先生からの指示や宿題の内容を忘れてしまう

ADHDの子どもにとって、記憶を維持することは大きな困難の一つです。
また、上記で説明したように、授業中に集中を維持することも苦手なため、授業中に先生が伝えた宿題の内容や提出期限を聞きそびれてしまうこともあります。
また、聞いていたとしても、興味のない内容であれば記憶から抜け落ちてしまうことがよくあります。

例えば、「宿題を出す時に必要なプリントを学校に忘れてしまう」「家で問題集を探している間に、別のことに気を取られて宿題の存在を忘れてしまう」といったことが頻繁に起こります。
このような状況では、宿題に取り組む以前の段階でつまずいてしまうため、子ども自身も「宿題は自分には無理だ」と思い込むようになります。

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ADHDの子に宿題をさせる5つのコツ

ADHDの子どもに宿題をさせるのは、単に「頑張れ」と促すだけでは難しいものです。
ここでは、ADHDの子どもをサポートするための5つのコツをご紹介します。

1. 一緒に学習計画を立てる

ADHDの子どもは、長期的な計画を立てたり、やるべきタスクを整理したりすることが苦手です。これは、脳の実行機能(タスクを整理し、順序立てて行動する能力)の弱さが原因とされています。
そのため、一緒に学習計画を立てることで、子どもが「何を」「いつまでに」「どうすれば」良いか?を明確にし、宿題に取り組むストレスを軽減できることがあります。

具体的な方法としては以下の通りです。

小さな目標を立てる

「漢字ドリル1ページ」といった漠然とした目標ではなく、「漢字5個を書いて覚える」や「算数の1問を解く」など、具体的で小さな目標に分けることでハードルが下がります。

タイムスケジュールを作る

タイマーを活用して「15分集中→5分休憩」のように短時間の学習サイクルを作ることで集中力が持続しやすくなります。

進行状況を視覚化する

その日の目標が終わった後に、チェックを入れたりシールを貼る表を作り、達成感を感じられる工夫をすることも効果的です。

2. 授業の予習を行う習慣をつける

ADHDの子どもは授業中に集中力が続かず、授業内容を十分に理解できない場合があります。「授業内容の理解不足」によって、宿題に取り組むことに困難を感じることも少なくありません。
そこで、ちょっとした「授業の予習」を取り入れることで、授業中に集中すべき箇所がわかることで授業が理解しやすくなり、宿題に対するハードルを下げる効果が期待できます。

具体的な方法としては以下の通りです。

教科書を一緒に読む

明日の授業で習うページを親子で軽く目を通し、難しい言葉や問題があればかみ砕いて解説してあげるといいでしょう。保護者が時間をとれない場合は家庭教師などの第三者に依頼するのもおすすめです。

授業中に集中して聞くべきところを明確にする

授業を受ける前日に教科書を読み、わからなかった部分や気になった点をノートにメモしておきましょう。事前に整理しておくことで、授業中に「どこに集中すればよいか」が明確になります。集中すべきポイントがはっきりすることで、授業内容の理解が深まりやすくなります。

3. 「宿題をしてから遊びに行く」などのルールを決める

ADHDの子どもは、目の前の楽しいことに意識が向きやすい特性があります。
そのため、「宿題の後に楽しみが待っている」というルールを明確にすることで、宿題に対するモチベーションを高めることが可能です。

具体的な方法としては以下の通りです。

スケジュール表を活用

スケジュール表を活用し、学習時間と自由時間を視覚的に分けることで、子どもが「今は宿題の時間だ」と理解しやすくなります。

ご褒美の設定

宿題が終わった後に、好きなこと(ゲームなど)をする時間を作るといいでしょう。ただし、好きなことをやりたいがために、宿題を雑に終わらせることがないよう、注意が必要です。

ルールの見える化

リビングや子どもの机に「宿題が終わってから遊びましょう」と書かれたルールを貼り出し、子ども自身が目で見て確認できるようにすることも効果的です。

4. 学校に子どもの特性を理解してもらい、合理的配慮をお願いする

宿題の負担を軽減するためには、学校との連携が重要です。
まず、担任の先生に子どもの特性を具体的に伝え、適切な配慮をお願いしましょう。ただし、配慮の内容や範囲は学校や先生によって異なるため、まずは相談してみることが大切です。

具体的な配慮の例としては以下の通りです。

宿題の量の調整

他の生徒より宿題の分量を減らしてもらう、あるいは簡略化してもらうことで、子どもが宿題に取り組みやすくなるでしょう。

提出期限の延長

必要に応じて、宿題の提出期限を柔軟に設定してもらいましょう。そうすることで、「間に合わないから諦める」といった感情が生まれにくくなります。

保護者への共有

宿題の内容を子どもに口頭やプリントで伝えるだけではなく、保護者にメールなどで共有してもらうことも効果的です。子どもが宿題の内容を忘れてしまっても保護者がカバーできるようになります。

5. 宿題に取り組みやすい環境を作る

ADHDの子どもは、周囲の刺激に敏感で、集中力が散りやすい傾向があります。宿題に集中できる環境を整えることができれば、学習の効率が大きく向上します。

具体的な環境づくりの工夫としては以下の通りです。

視界に余計なものを置かない

スマホやゲーム、漫画などの誘惑を子どもの視界から遠ざけることが大切です。また、手の届かない場所に置く、音が聞こえないようにするなどの工夫も効果的でしょう。

家族で勉強時間を作る

子どもが宿題をしている間、保護者も一緒に読書や仕事、資格試験の勉強をするなど「静かに集中する時間」を親子で共有します。そうすると「なんで自分だけが勉強しなければいけないのか」といった不公平感が薄まり、学習に取り組みやすくなるでしょう。

整理された机を準備

必要な文房具やノートをあらかじめ用意し、探す手間を省きます。余計なことに気を払わなくてもいいようにすることで、お子さんの集中力が維持しやすくなるでしょう。

宿題に取り組まないADHDの子に親がやってはいけない5つのこと

ADHDの子どもが宿題に取り組めないとき、親としてはイライラしたり、どう対応すれば良いか迷ったりすることも多いでしょう。
ここでは、子どもの成長を妨げないために、親が避けるべき5つの対応について詳しく解説します。

1. 「宿題なんてやらなくてもいい」と話す

宿題に苦戦している子どもを見ると「そんなに大変なら宿題なんてやらなくてもいいよ」と言いたくなることもあるかもしれません。しかし、こうした発言は子どもの成長の機会を奪うことになりかねません。

ADHDの子どもにとって、宿題をやり遂げる経験は、「自分でもできる」という成功体験を得る重要なチャンスです。それを放棄させることは、達成感を味わう機会を失わせることにつながります。
また、子どもが「宿題をしなくてもいいんだ」と認識すると、将来的な責任感や自己管理能力が育ちにくくなることもあるので注意が必要です。

2. 頭ごなしに怒る

宿題をしない子どもを見て、つい「なんでやらないの!」と怒ってしまう親も少なくありません。しかし、頭ごなしに怒ることで得られるのは、子どもの自己否定感だけです。
特にADHDの子どもは感情の影響を受けやすく、怒られるとやる気を失ったり自信を失くす傾向があります。

怒るのではなく、宿題に取り組めない理由を一緒に探る姿勢を持つことが大切です。
「どうしたら宿題がやりやすくなるかな?」と話し合いながら、具体的なサポート方法を見つけていきましょう。

3. 答えだけを教える

宿題を早く終わらせてほしいがために、親が答えだけを教えてしまうのも絶対にやめましょう。
このような対応は、子どもが自分で考える力を養う機会を奪ってしまいます。
また、子どもは「どうせお母さん(お父さん)が答えを教えてくれるから」と思い、自発的に取り組む意欲を失ってしまうこともあります。
ADHDの子どもには、プロセスを一緒に考える手助けをすることが必要です。
例えば、「ここまではできているね。次はどうしたらいいと思う?」と問いかけたり、「この部分が難しいんだね。一緒に考えよう」と寄り添う姿勢が大切です。

4. 本人に任せきりにしてしまう

「自分の宿題なんだから、自分でやるべき」と本人に任せきりにするのも避けるべきです。ADHDの子どもは、自分でタスクを管理する能力(実行機能)が弱いため、宿題に取り組む前に何をどうすれば良いか分からなくなってしまうことがあります。
その結果、宿題を先延ばしにしたり、手を付けられなくなったりすることが多いのです。

宿題に取り組む際は、保護者のサポートが重要です。
一緒に計画を立てたり、タイマーを使って取り組む時間を区切ったりするなどの工夫を取り入れると良いでしょう。保護者のサポートが困難な場合は家庭教師など第三者に依頼するといいでしょう。

5. 罰を与える

宿題をしないことに対して罰を与えるのは、特に避けるべき対応です。
罰を与えると、子どもは「宿題=嫌なこと」「罰を避けるためにやるもの」と感じるようになります。これでは、宿題へのモチベーションがさらに低下し、学習への意欲が育ちません。

罰を与えるのではなく、宿題を終えたときに得られるポジティブな結果を強調する方法を取り入れましょう。
例えば、「宿題を終えたらゲームを10分間やろう」といった具体的なご褒美を設定するのが効果的です。

まとめ

ADHDの子どもが宿題に取り組むことに積極的になれないのは、お子さんの「特性」によるものです。その「特性」を理解することが、親が適切なサポートを行うための第一歩です。
単に「頑張れ」と励ますだけではなく、宿題を進めやすくするために計画を一緒に立てたり、集中しやすい環境を整えたりすることで宿題へのハードルを下げることができます。
家庭教師のマスターでは、ADHDのお子さん向けのサポートを行っています。ご興味のある方は気軽にお問合せください。

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