ADHDの子どもの忘れ物が減る!親ができる対策&声かけガイド

公開日:2025年7月15日
更新日:2025年7月15日

このコラムでは、ADHDの子どもが忘れ物を繰り返してしまう理由や脳の特性について解説します。
あわせて、家庭でできる予防策や、忘れ物をしたときの声かけの工夫、便利グッズやアプリも紹介。忘れ物に悩む親子に向けた、やさしいサポートガイドです。

目次

なぜADHDの子は忘れ物が多いのか?|脳の特性と行動のつながり

「昨日も言ったのに、また忘れてる…」
ADHDの子どもを育てている保護者の多くが、このような忘れ物の悩みを抱えています。注意しても繰り返されるため、「ちゃんと聞いてるの?」「直す気がないの?」と感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、ADHDの子どもにとっての「忘れ物」は、性格ややる気の問題ではなく、脳の働きによって起きるものであることが多いのです。
ここでは、ADHDの子が忘れ物をしやすい主な背景を5つの視点から解説します。

1. 注意のコントロールが苦手になりやすい

ADHDの大きな特徴の一つに、「注意の切り替え」や「集中の持続」が難しいという点があります。
忘れ物の多くは、準備中に他のことに気を取られてしまうことから始まります。
例えば、ランドセルの中身を確認していたのに、途中でテレビやスマートフォンの音に気を取られてしまい、準備が途中で終わってしまう…などです。
本人にとっては無意識のうちに気が逸れてしまっているのですが、「やる気がない」と誤解されてしまうことも少なくありません。

2. ワーキングメモリの弱さが影響する

ワーキングメモリとは、「短期間の情報を頭の中で一時的に保つ力」のことです。
ADHDの子どもはこの機能が弱い傾向があり、「これをやって、次にこれをして…」という一連の行動を記憶しておくことが難しいことがあります。
例えば、「体操服と水筒を忘れないでね」と言われても、聞いた瞬間は覚えていても、玄関に行くまでの間に忘れてしまう、といったことが頻繁に起こります。

ワーキングメモリーについてもっと知りたい方はこちら
「ワーキングメモリーが低い子の特徴とよくある困りごと」

3. 時間や手順の感覚がつかみにくい

ADHDの子どもは、「どのくらい時間がかかるか」「何をいつまでにやればいいか」といった時間や手順の感覚をつかむのが苦手です。
そのため、登校前の支度を「後でやろう」と思っていたら時間がなくなってしまい、結果的に忘れ物をしてしまうケースもよくあります。
また、「①教科書を出す→②プリントを入れる→③連絡帳を書く」といった段取りを頭の中で整理しながら行うことにも苦手さを感じやすい傾向があります。

4. 興味のないことへの意識が向きにくい

ADHDの子どもは、自分が「おもしろい」「楽しい」と感じることには強い集中力を発揮しますが、そうでないことには意識が向きづらいという傾向があります。
例えば、好きな工作やゲームには夢中になれるのに、学校の支度や提出物の準備には身が入らない…などです。これは単なる甘えやわがままではなく、脳の報酬系の働き方が関係しています。

この傾向が強いと、持ち物の準備を後回しにしてしまったり、準備しようと思ったのに気づいたら違うことをしていた、ということが頻発します。

参照:日本生物学的精神医学会誌 22 巻 4 号「報酬系を通した注意欠如・多動性障害の病態理解」

5. 「またやってしまった」が自己肯定感を下げることも

忘れ物が続くと、周囲から頻繁に注意されたり、自分でも「またやってしまった…」と落ち込んだりするようになります。
特にADHDの子どもは、「何度言われてもできない自分」に対して自己否定感を抱きやすい傾向があります。

このような状態が続くと、「どうせまた忘れるからやっても無駄だ」といった無力感につながり、忘れ物の改善どころか悪循環に陥ってしまうこともあるため、責めるよりもサポートする視点がとても大切になります。

今日からできる!忘れ物を防ぐ家庭での工夫と対策

忘れ物が多い子どもに対して、叱るのではなく“環境を整える”ことがとても大切です。
ADHDの特性を持つ子どもには、「忘れにくくなる仕組み」を生活の中に自然に組み込むことで、少しずつ自分で準備する力が育っていきます。
ここでは、今日からすぐに取り入れられる5つの家庭での工夫をご紹介します。

1. 視覚化されたチェックリストを活用する

ADHDの子どもには、「頭の中だけで管理する」ことが難しいという特徴があります。
そのため、持ち物や準備する内容を「見える形」にすることで、忘れ物を防ぐ手助けになります。

例えば、「持ち物チェックリスト」を子どもの目に入りやすい場所に貼っておくと、「次に何をするか」が一目で分かります。
文字だけでなくイラストや色分けを使えば、さらに分かりやすくなり、子ども自身が自分で確認する習慣もつきやすくなります。

2. 持ち物の定位置を決めて“迷わない仕組み”をつくる

毎朝「どこに置いたっけ?」と探し物から始まるようだと、それだけで忘れ物の可能性が高まります。
そこでおすすめなのが、ランドセルや水筒、プリント類などを“しまう場所”を決めることです。

例えば、「連絡帳はこのトレー」「給食袋はこのフック」など、しまう定位置を決めて“元に戻す”習慣を作ることで、翌朝の準備が格段にスムーズになります。
一緒にラベルを貼ったり、収納を工夫することで、子どもにとっても分かりやすい空間づくりをしてみましょう。

3. 前日のうちに親子で準備タイムを設ける

朝のバタバタした忙しい時間帯では、どうしても忘れ物が起こりやすくなります。
そこで、前日の夕方や寝る前に“一緒に支度を確認する時間”を作るのが有効です。

この際に、チェックリストを使いながら「教科書OK?」「提出物は入れた?」と一つひとつ確認することで、子ども自身が準備の流れを学べます。
慣れてきたら、「自分で準備して、後で親に見てもらう」スタイルにも移行して、自立への第一歩に踏み出しましょう。

4. タイマー・音声リマインダーで「気づき」をサポート

ADHDの子どもは、今やっていることに夢中になると、次にやるべきことを忘れてしまいやすい傾向があります。
そんな時には、タイマーや音声リマインダーが大きな助けになります。

例えば、「朝7時にアラームで“ランドセルチェック”の音が鳴る」ように設定しておけば、注意を切り替えるきっかけになります。
スマートフォンやタブレットの通知機能なども活用すれば、視覚・聴覚の両方から自然に意識づけができます。

5. 忘れ物をしなかった日を一緒に喜ぶ

忘れ物対策で大切なのは、「できなかった日を責める」よりも「できた日をしっかり褒める」ことです。
たとえ小さな一歩でも、「今日は全部そろってたね!」と伝えることで、子どもの自己肯定感を高めることができます。

繰り返し褒められることで、子どもは「褒められると気持ちいい」「次も忘れないようにしよう」と思えるようになります。その積み重ねが、やがて自信へとつながっていきます。

忘れ物をした時の“声かけと対応”|怒らず支える5ステップ

せっかく準備をしていても、忘れ物がゼロになるわけではありません。ADHDの特性を持つ子どもにとって、忘れ物は「よくあること」である一方で、「何度も怒られる経験」にもなりがちです。その積み重ねは、「どうせまた怒られる」「自分はダメなんだ」といったネガティブな自己評価につながることもあります。
だからこそ、忘れ物をしてしまったときこそ、成長につながる関わり方が大切です。以下の5ステップで、子どもが前向きに次へ進めるようサポートしていきましょう。

1. まずは冷静に「事実」を受け止める

忘れ物が発覚した時、つい「また?」「何度言ったらわかるの!?」と反応してしまいがちですが、まずは、感情的にならず「事実だけ」を冷静に受け止める姿勢が大切です。

「今日は連絡帳を持っていかなかったんだね」「プリントがランドセルに入ってなかったみたいだね」など、非難せず事実を確認することで、子どもも安心して状況を話せるようになります。

2. 責めずに「何が起きたか」を整理する

次に、「どうして忘れたのか」を一緒に振り返ってみましょう。
このときも、決して責めたり叱ったりせず、対話の姿勢で関わることがポイントです。

「どのタイミングで気づいた?」「準備はどこまでできてたかな?」など、子どもの視点で一緒に振り返ることで、本人の中にも“気づき”が生まれやすくなります。

3. 原因を一緒に見つけ、「次はどうする?」を考える

忘れ物の原因が分かってきたら、それに対して「次はどうしたらいいかな?」を一緒に考えます。
大切なのは、子ども自身にアイデアを出させることです。自分自身で考えることで、行動の改善にもつながりやすくなります。

例えば、「寝る前にチェックリストをもう一回見る」「水筒を玄関に置いておく」など、子どもが実現できそうな具体策を一緒に決めましょう。

4. 子どもと一緒に“防止の仕組み”を再設定する

忘れ物を防ぐには、仕組みやルールの見直しも欠かせません。
前にうまくいかなかった方法があるなら、いったんやめて、今の子どもに合った新しい方法に変えてみることも大切です。

「もっと見える場所にチェックリストを貼ろう」「準備の順番カードを作ってみよう」など、子どもと一緒に“工夫を楽しむ”姿勢を持つことで、自発的に取り組めるようになります。

5. 小さな変化を見つけて認める声かけをする

ADHDの特性を持つ子どもの場合、忘れ物の改善には時間がかかることが多いです。だからこそ、少しでも前進したことを見逃さず、しっかり認める声かけが重要になります。

「昨日より早く準備してたね」「プリントは忘れたけど、体操服はバッチリだったね」など、ポジティブな面を具体的に伝えることで、子どもは「がんばってよかった」と感じられます。
こうした積み重ねが、子どもの自信とやる気を少しずつ育てていきます。

子どもの自己肯定感についてもっと知りたい方はこちら
「子どもの自己肯定感の高め方とは?|7つのNG行動についても解説」

家庭で使える!おすすめ便利グッズ&アプリ

忘れ物を防ぐためには、親の声かけや習慣づくりと平行して、便利な道具やアプリを活用することも効果的です。
視覚や音、触覚などの感覚に働きかけるサポートアイテムは、ADHDの子どもの特性に合っており、準備や片付けを「自分でできた!」という成功体験につなげやすくなります。
ここでは、家庭で手軽に使えるおすすめのグッズやアプリを5つご紹介します。

1. 支度ボード・チェックシートで“見える化”

「やることを目で確認できる」ようにするだけで、準備のしやすさがぐっと変わります。
例えば、支度ボードやチェックシートを使えば、「持ち物の準備」や「朝やること」が一目で分かりやすく整理できます。

マグネットやイラスト付きのボードを使うと、まだ字が読めない子でも感覚的に準備ができるようになります。市販のホワイトボードなどでOKなので、子どもに合ったものを選びましょう。

2. 定位置ラベルや収納ボックスで“片付けやすく”

忘れ物の原因は、「どこに置いたか分からない」「入れ忘れた」であることが多いです。
そんな時に便利なのが、収納場所に名前やイラストのラベルをつけたり、アイテムごとの収納ボックスを用意したりする方法です。

「水筒はここ」「連絡帳はこのトレー」といった“いつもココにある”という定位置を決めることで、毎回探し回るようなことがなくなります。
100円ショップなどでも手軽に揃うアイテムなので、試しやすい方法の一つです。

3. タイマー・アラームで“やるタイミング”を知らせる

ADHDの子どもは、「今やっていることに集中しすぎて次の行動に移れない」「やる時間を忘れてしまう」といったことがよくあります。
そこで、タイマーやアラームを使って“行動の切り替え”をサポートしてみましょう。

スマホのアラームやキッチンタイマー、または音声で知らせてくれるスマートスピーカーなど、音と時間のセットで「今、準備しよう!」という合図を設定することができます。
これらを日常的に使う習慣を定着させることで、少しずつ行動のリズムが整いやすくなります。

4. おしたくアプリ・ToDoアプリで“自分で管理”を促す

少し年齢が上がってきた子には、スマートフォンやタブレットを活用した、ToDoアプリリマインド機能もおすすめです。
画面上で持ち物をチェックしたり、やることを確認できる仕組みがあり、うまく使いこなせるようになれば、効果が出やすくなります。

例えば「やることカード」やLINEの「リマインくん」などは、子どもでも使いやすいようにデザインされており、“自分で準備する”感覚や“忘れ物を防止する感覚”を育てるきっかけにもなります。

参照:「やることカード」

5. トラッカーや忘れ物防止タグで“置き忘れ”を防止

忘れ物の中でも、「持って出たのに途中で置いてきてしまった」という“置き忘れ”に悩む場合は、タグ型の忘れ物防止グッズ(Bluetoothトラッカー)が便利です。

ランドセルや水筒にタグをつけておけば、スマホと連動して離れた場所に忘れたときにアラートを出してくれるので、「うっかり」に気づくきっかけになります。
小学生でも使いやすいシンプルなタイプも多く、外出時のサポートに役立ちます。

まとめ

ADHDの子どもが忘れ物を繰り返すのは、脳の特性によるものであり、本人の努力不足ではありません。だからこそ、責めるのではなく、仕組みや環境を工夫してサポートすることが大切です。
家庭でできる小さな工夫や声かけの積み重ねが、子どもの自信や自立につながっていきます。焦らず、一歩ずつ「できた!」を一緒に増やしていきましょう。

この記事を企画・執筆・監修した人

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この記事は、家庭教師のマスターを運営している株式会社マスターシップスの「家庭教師のマスター教務部」が企画・執筆・監修した記事です。家庭教師のマスター教務部は、教育関連で10年以上の業務経験を持つスタッフで編成されています。
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