発達障害とIQのホントの関係とは?|子どもの可能性を正しく理解しよう

公開日:2025年5月22日

「発達障害のある子は本当にIQが低いの?」誤解されがちなIQとの関係をわかりやすく解説し、子どもの力を伸ばすヒントもご紹介します。
また、IQの測定方法や、IQを高めるためにできる具体的な取り組みについても詳しくご紹介します。

IQ(知能指数)の基礎知識

「発達障害のある子はIQが低いのでは?」という疑問を抱く保護者は少なくありません。
しかし、IQは単に高い・低いで判断するものではなく、その子の得意・不得意や特性を理解するための“ひとつの指標”です。
この章では、IQの基本的な意味や測定方法、数値の見方についてわかりやすく解説します。また、よく混同されやすい「ギフテッド」との違いや、「知的障害」と「発達障害」の区別についても触れていきます。

1. IQとは何か?

IQ(Intelligence Quotient/知能指数)とは、知的な能力を数値で表したものです。
具体的には、言語理解、推理力、記憶力、処理スピードなど、日常生活や学習に必要な能力を評価し、相対的な知能の高さを示します。一般的にIQは100を基準とし、多くの人が85〜115の範囲に分布します。これは、「平均的な知能レベル」とされるゾーンです。

2. IQの測定方法とは?

IQは心理検査によって測定されます。代表的なものに「WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)」という検査があります。これは6〜16歳の子どもを対象に、以下のような項目を通して総合的な知能を測るものです。

言語理解(VCI)語彙力や理解力
知覚推理(PRI)視覚的・空間的な推理力
ワーキングメモリー(WMI)短期記憶力や情報の操作力
処理速度(PSI)素早く正確に作業をこなす能力

これらの得点を総合した「全検査IQ(FSIQ)」が、一般に言われるIQの数値となります。

WISC-IVの結果の見方についてもっと知りたい方はこちら
「WISC-IV知能検査(ウィスク-4)の結果の見方と検査内容」

3. IQの数値はどう見ればいい?

IQの数値は「平均を100」とする偏差値的な見方が基本です。おおまかに以下のように区分されます。

130以上非常に高い(上位2%)
115〜129やや高い
85〜114平均的
70〜84やや低い
70未満知的障害の可能性があるとされる範囲

ただし重要なのは、数値だけでその子の能力や可能性を決めつけてはいけないということです。
特に発達障害のある子は、分野によって得意・不得意の差が大きく、IQが正確に測りにくいこともあります。

4. 「ギフテッド」とは何?|発達障害と混同しやすい違いに注意

「ギフテッド(Gifted)」とは、特定の分野で非常に優れた才能を持つ子どもを指します。
一般的にはIQが130以上とされることが多く、知的好奇心が強く、独創的な考え方をする傾向があります。

一方で、ギフテッドの子どもは感受性が強く、学校生活になじめなかったり、注意散漫な様子があったりと、発達障害と誤解されることもあります。
また、ギフテッドと発達障害が同時に存在する「二重に特別な子(2E=Twice Exceptional)」というケースもあります。

才能があるから困りごとがない、というわけではありません。それぞれの違いと特性を理解し、適切にサポートすることが大切です。

5. 知的障害と発達障害はどう違う?

知的障害とは、知的な発達が平均より著しく遅れており、日常生活に支援が必要な状態を指します。IQが70未満であることが、診断基準のひとつとされています。

一方、発達障害は、脳の働き方に特性がある状態であり、知的な遅れがないケースも多く見られます。例えば、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)は、IQが平均より高い場合もあります。

つまり、知的障害と発達障害はまったく別のものです。ただし、発達障害と知的障害が併存する場合もあるため、正確な評価と専門的な診断が重要です。

それぞれの発達障害とIQの関連性

発達障害とIQの関係は一律ではありません。子どものタイプや特性によって、IQが高くても困りごとを抱えている場合もあれば、IQが平均的でも支援が必要なケースもあります。
この章では、発達障害の種類ごとにIQとの関係性を見ていきながら、「境界知能」「IQのバラつき」といった誤解されやすい概念についても解説します。

1. ADHDとIQの関連性

ADHD(注意欠如・多動症)は、集中力の持続が難しかったり、衝動的な行動が見られたりする発達障害です。
一般的にADHDの子どもは、IQが低いと思われがちですが、実際には平均的なIQを持つ子も多くいます。なぜなら、検査時に「興味のない問題に集中できない」「じっと座っていられない」といった特性が影響し、本来の能力よりも低いスコアが出ることもあるからです。
そのため、IQの数値だけでADHDの子どもの力を判断するのは適切ではありません。

2. ASDとIQの関連性

ASD(自閉スペクトラム症)は、コミュニケーションや対人関係の特性、こだわりの強さなどが見られる発達障害です。
その中でも、以前「アスペルガー症候群」と呼ばれていたタイプの子どもは、高いIQを持つケースがあるとされてきました。しかし、すべてのASDの子どもがIQが高いわけではありません。言語理解は得意だけれど、処理速度が極端に遅いといったように、能力のバラつきが大きいという特徴があります。
このように凹凸のある子どもは、周囲に理解されにくい困難を抱えることも多いです。

3. LDとIQの関連性

LD(学習障害)は、読み書きや計算などの特定の学習分野に困難がある発達障害です。
IQが低いために学習がうまくいかないのではなく、IQが平均以上であっても、特定の能力だけが極端に苦手なことがあります。例えば、「文章はすらすら読めるのに、文字を書くのが極端に苦手」といったケースもあります。
要するに、LDは知能全体の問題ではなく、脳の特定の機能のアンバランスによって起こる困りごとということです。

書字障害・読字障害についてもっと知りたい方はこちら
「漢字が覚えられない発達障害(書字障害・読字障害など)|チェックリスト付き」
算数障害についてもっと知りたい方はこちら
「算数障害の子どもの特徴とサポート方法を解説【簡易チェックリスト付き】」

4. 境界知能(グレーゾーン)とは?|IQの見方に注意しよう

「境界知能」とは、IQがおおよそ70〜84の範囲にある子どもを指します。
平均よりやや低めの知能レベルですが、知的障害とは診断されないグレーな領域です。

境界知能の子どもは、「言われたことは理解できるけれど、応用が効かない」「初めての課題に弱い」といった特性が見られることがあり、学校生活や学習面でつまずきやすい傾向があります。しかし、明確な診断がつきにくいため、支援につながりにくい現実もあります。

このようなグレーゾーンの子どもに対しても、IQの数値だけで判断するのではなく、具体的な困りごとや生活面の様子を丁寧に観察することが大切です。

5. IQの凸凹が大きいと発達障害なの?

WISC検査などでIQを測ると、「言語理解は得意だけど処理速度が極端に遅い」といったように、項目ごとに点数の差が大きく出ることがあります。これを「認知の凸凹(デコボコ)」と呼びます。

IQの総合得点(FSIQ)が平均でも、このような凸凹が大きい場合には、発達障害の可能性が示唆されることがあります。特にASDやLDのある子どもに多く見られる特徴です。

ただし、凸凹がある=必ず発達障害、というわけではありません。
その子が日常生活や学習の中でどのような困りごとを抱えているのかを見極めるためにも、数値だけにとらわれず、専門家による総合的な判断が必要です。

処理速度(PSI)についてもっと知りたい方はこちら
「WISCで処理速度だけが低いのはなぜ?|子どもの特徴と接し方のヒント」

子どものIQを上げる5つの方法

IQは遺伝だけで決まるものではなく、日常の過ごし方や環境によって伸びる側面もあります。
特に幼少期から学齢期の子どもは、脳の発達が著しい時期です。日々の関わり方ひとつで、認知力や思考力が大きく変わっていく可能性があります。
ここでは、家庭でも実践しやすい「IQを伸ばすための5つの習慣」と、親としての大切な視点についてご紹介します。

1. 子どもに音読をさせる

音読は、読む・聞く・話すという3つのプロセスを同時に使うため、脳を総合的に活性化させる優れた学習法です。
言葉を正しく読み取る力、文章の構造を理解する力、さらには語彙力や記憶力も養うことができます。

また、音読には「黙読」では得られない効果があります。
自分の声を聞くことで記憶に残りやすくなり、文章の意味を深く理解しようとする姿勢も身につきます。

例えば、

  • 毎晩5分だけ音読の時間を作る
  • 朝食前に1ページ読む習慣をつける
  • 読み終わったあとに「どんな内容だった?」と親が簡単に会話する

といった形で、親子で気軽に継続できる環境を作るとよいでしょう。

2. いろいろな人と会話する機会を増やす

子どもが成長する上で、会話は最も自然で効果的な知的刺激のひとつです。
特に大人との会話は、語彙や表現の幅を広げるだけでなく、「どうすれば相手に伝わるか」を考える力や、柔軟な思考力を育てるきっかけになります。

「いろいろな人」とは、親や兄弟だけでなく、祖父母、近所の人、友人の保護者、学校の先生や職員、習い事の先生なども含まれます。年齢や立場の違う相手とやり取りをする中で、子どもは多様な視点に触れることができます。
また、テレビや動画を見たあとに「どんな内容だった?」「どう思った?」と問いかけるだけでも、言語化する力が磨かれます。

3. 様々な「遊び」や「スポーツ」をする

遊びやスポーツは、子どもにとって、単なる息抜きではなく、実は重要な“学びの場”でもあります。
特にIQの向上に関係するのは、「ルールを理解する」「状況を予測して行動する」「勝つための戦略を考える」といった頭の使い方です。

例えば、

  • サッカーや鬼ごっこ → 状況判断・反応速度
  • 将棋やボードゲーム → 論理的思考・計画力
  • ブロック遊びやレゴ → 空間認識・創造力
  • 鬼滅ごっこなどのごっこ遊び → 想像力・コミュニケーション力

このように、ルールを理解しながら頭と身体を使って遊ぶ経験が、IQを構成する要素(処理速度・ワーキングメモリなど)に良い影響を与えるとされています。

4. 脳に良い食べ物を積極的に取り入れる

IQの土台である「脳」の健康を支えるためには、毎日の食事が非常に重要です。
栄養バランスが崩れると、集中力や記憶力が落ちたり、情緒が不安定になったりすることもあります。

特に注目されている栄養素には以下のようなものがあります。

DHA・EPA青魚(サバ、イワシ、鮭など)に多く含まれ、脳細胞の働きを活性化させる
たんぱく質卵、納豆、豆腐、肉など。神経伝達物質の材料になる
ビタミンB群脳のエネルギー代謝を助ける(豚肉、玄米、緑黄色野菜)
鉄分・亜鉛注意力や記憶力に関与(赤身肉、レバー、小松菜など)

また、朝食を抜くと脳のエネルギーが不足し、学習効率が下がるという報告もあります。
「魚や野菜を少しずつでも毎日のメニューに取り入れる」「お菓子やジャンクフードの頻度を減らす」など、できることから始めてみましょう。

5. 十分な睡眠時間を確保する

睡眠は、脳の情報整理と記憶の定着に不可欠なプロセスです。学んだことを効率よく吸収し、翌日以降に活かすためには、“寝ている時間”がとても重要になります。
研究によると、慢性的に睡眠が不足している子どもは、IQスコアや学力に影響が出やすいことがわかっています。特に処理速度・注意力・感情の安定性などに悪影響が出ることがあります。

推奨される睡眠時間の目安は以下の通りです。

小学生9〜10時間
中学生8〜9時間
高校生7〜8時間

夜遅くまでテレビやスマホを見ていると寝つきが悪くなるため、寝る前はリラックスできる環境を整え、決まった時間に就寝・起床することを心がけましょう。

参照:文部科学省「中高生を中心とした子供の生活習慣づくりの現状と課題について」

まとめ

発達障害とIQの関係は一概に語れるものではなく、子ども一人ひとりに異なる特性や可能性があります。
IQの数値にとらわれるのではなく、その子の得意や伸びる力を見つけ、適切なサポートをすることが何より大切です。子どもの個性を理解し、前向きに関わっていくことで、学びと成長のチャンスは大きく広がっていきます。そして、私たち大人が柔軟な視点を持って子どもと一緒に歩んでいくことで、子どもの可能性を最大限広げることができるでしょう。

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