【第108回】令和も続く給食論争「和食に牛乳は合わない」?決着がつかない理由とは

みなさんは、牛乳がお好きですか?

今は飲まないという方も、子どものころ、学校の給食では毎日のように飲んでいたのではないでしょうか。

私ヤスコもその一人です。でも、夏場にぬるくなってパンパンに膨らんだパックの牛乳を飲むのはとても苦手で……。パンなど洋食の日ならいざ知らず、ごはんと焼き魚などの和食の日には「うーん、おいしくない」などと毒づきながら、涙目で牛乳を一気飲みしていました。

そう、あれは学校側や栄養士さんの苦労も知らない遠い遠い昔の話――。

のはずが、先月26日の産経WESTを見て仰天!

「和食とあわない」学校給食に牛乳不要論 コスト高も議論の背景
https://www.sankei.com/article/20230926-2RA7Y5AXRVJENKGHP3ITJILCOE/?fbclid=IwAR3rbdov0B7aST4Hc9GYvUIe8UVJnNGCHhCeG0kQ2TV41lRsoAgt6LV-GRQ

今年8月に和歌山市の教育委員会が「和食のときは牛乳を止めてみては」と提案したことで、物議を醸しているという記事があったのです。えっ、この論争、庶民の会話レベルじゃなくて、教育委員会でも続いていたんですね。

給食費の25%が牛乳代

記事によると、牛乳の価格が上がり、給食に使える予算を圧迫していることも理由のようです。値上がりの背景には、牛の飼料代や、燃料・資材価格の高騰などがあります。

和歌山市では今年度の2学期から、食材の値上がり分を公費で生徒1人1食30円上乗せしているとのこと。記事によると「現在の牛乳価格は1パック70円で、1人分の給食費282円(自校調理)、同275円(共同調理)の約25%を占める」とのことなので、相当な割合を牛乳が占めていることになります。

また日本の伝統的な食事には牛乳を飲む習慣がないことから、「それって食育としてどうなの?」という見方もあるようです。

でも現状では、簡単に牛乳を止めるわけにはいかないのです。

理由は、「学校給食法(学校給食法施行規則)」という法律で、牛乳を入れるように指示されているから。これは戦後、栄養状態のよくない子どもたちに対して、アメリカの民間団体から脱脂粉乳の支援があったことなどが起源となっているようです。

そもそも牛乳は、成長期に必要なカルシウムを効率よく摂取でき、授業中の集中力を高めてくれる必須アミノ酸「トリプトファン」も含んでいると言われるスーパードリンク。

なかなか他の食材では代わりが効かないらしいんですよね。

ドリンクタイムという試み

しかし過去には、そんな「和食×牛乳」問題に、果敢に挑んだ市があります。

現在はほぼすべての給食を米食に切り替えているという新潟県三条市では、2015年から給食の時間とは別に牛乳を飲む時間を設ける「ドリンクタイム」を小中学校に導入。

給食の残量が減ったり、昼休みや清掃後に冷たい牛乳が飲めて生徒が喜ぶという効果があったそうです。しかし一方で、ドリンクタイムの確保が難しく、結局、給食の直後になってしまったり、教師の負担が大幅に増えてしまうという課題も。

いろいろあって、2021年には廃止されてしまった取り組みですが、意義のある試みだったのではないかとヤスコは思います。

また今では、牛乳アレルギーや牛乳を飲むと体調を崩してしまう子どもたちもいます。

そんな子たちは、お茶の紙パック飲料などを持参して代替としているようですが、事前に学校に申請しなければならず、その手間が保護者の負担になることもあるようです。

子どもの成長を願ってつくられた「学校給食法」ですが、制定された1954年(昭和29年)からすでに70年が経とうとしています。おいしい牛乳も飲み続けたいけど、それ以外の選択肢も検討されていいはず。これからの時代にフィットした法律として、見直す時期が来ているのかもしれませんね。

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