月別アーカイブ: 2022年11月

【第97回】生徒が演奏した曲に「著作権使用料」はかからない?最高裁判決から、学園祭ライブや音楽の授業を考える

生徒が演奏した曲に「著作権使用料」はかからない?
最高裁判決から、学園祭ライブや音楽の授業を考える

みなさん、こんにちは!
最近ウチの子が、「YouTuberになりたい!」と言い出して、その成り行きをゆるーく見守っているヤスコです。

今ではキッズYouTuberやTikTokへの投稿、文化祭などでの音楽演奏のアップロードなども当たり前となり、「音楽の著作権」が身近な存在となりました。

そんな中、10月24日に報道されたニュースはちょっと注目。ピアノ教室など「音楽教室の著作権使用料」について、「生徒の演奏は徴収の対象外」とされた最高裁判所での判決です。

ちょっと難しい話になるかもしれませんが、これから皆さんやお子さんが「音楽」を使っていく上での参考になると思うので、ざっくりご紹介しますね!

生徒の演奏に著作権料がかからないのは、なぜ?

そもそも、この裁判のキッカケは、2017年。楽曲の著作権を管理するJASRACが、ヤマハ音楽振興会など音楽教室を運営する会社に対して「楽曲の使用料を請求する」と表明したことにさかのぼります。それに反発した約250の運営会社が「支払う義務はない」と主張して、裁判を起こしたのです。

著作権法では、公衆の面前で演奏をした場合、楽曲の作曲者や作詞者に「演奏権」があるとされていますが、無断で演奏すると「著作権の侵害」にあたってしまいます。

裁判では、先生と生徒、それぞれの立場に分けて、使用料の徴収は妥当かどうかの議論が交わされました。先生の演奏については2審で、「音楽教室側が、『公衆』にあたる生徒に聞かせる目的で行っている」ものとして徴収を認めました。そして今年の10月24日、生徒については「みずからの技術向上のために、自主的に演奏している」として、徴収の対象にはならないと判決が下されたのです。つまり、公衆に聴かせることが目的ではない、あくまで「個人的な練習」であるということがポイントになったのでしょう。

(一連の流れについては、NHKのニュース記事でくわしく解説されていますので、興味があれば読んでみてくださいね)

音楽教室の著作権使用料「生徒は対象外」最高裁判決ポイントは
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221024/k10013868361000.html

入学式で先輩が歌ってくれる歌はOK!
では、先生が授業で配る楽譜は……??

なぜ今回このニュースを紹介したかというと、ヤスコはこれを見て「じゃあ、学校での著作権使用料はどうなっているの?」とギモンがわいたからです。音楽教室も学校も「教育の現場」という意味では同じですものね。

たとえば、音楽の先生が楽譜をコピーして生徒に配る場合や、文化祭で生徒たちが行うライブ演奏、合唱コンクール、吹奏楽部などのコンサート映像をDVDに焼いて配る場合など、学校は音楽であふれています。そこには親や子どもたちが主体的にかかわることも少なくありません。だから「うっかり著作権法に違反してしまっている」ということがないようにしたいもの。

ということで、さっそくJASRACのホームページで調べてみました。

のぞいてみたのは、こちらのページ(「ジャスラの音楽著作権レポート」https://www.jasrac.or.jp/park/inschool/)や……

こちらのページ(「ジャスラの音楽著作権レポート」https://www.jasrac.or.jp/info/school/)。ケース別にわかりやすくまとまっています。

内容を読んでみると、基本的には「学校などの授業のための複製」や「営利を目的としない演奏・上映」「個人的に楽しむための複製」については著作権の手続きは必要ないそうです。たとえば「入学式で、先輩たちが歌を歌ってくれた」場合は手続きが不要、なのはわかりやすい例ですね。ただし、注意が必要なケースもあります。

文化祭や学園祭でのコンサートは、入場料をとらない非営利のものであれば著作権の申告は必要ありません。しかし、出演者への報酬が発生する場合は申告が必要だそう。 また、「先生が授業で使うために、歌詞や楽譜をコピーして生徒に配る」というのも基本的に手続きが不要なのですが、1クラスの人数を超えて複製する場合や、市販の楽譜のコピーであった場合はJASRACへの申告が必要なようです。

「じゃあ、〇〇なケースはどうなの?」と気になる方は、一度ウェブサイトをチェックしてみるのもよいかもしれません。

著作権料って、実際どのくらいかかるの?

では、実際に著作権料って、いくらぐらいかかるものなのでしょう? これに関しても、ちゃんとシミュレーションページが利用できるんですね。

https://www.jasrac.or.jp/info/create/calculation/publish/score.php

でたとえば、1500円で市販されている国内の楽譜を3曲分、30人分複製した場合を計算してみると……必要な著作権使用料は、税込みで4950円と算出されました。

こちらはあくまで目安であり、JASRACが管理している楽曲が対象です。でも、具体的な金額を算出してみると、「これらのお金がアーティストや関係者のもとに届き、彼らの活動を支えていくのだな」と感慨深い気持ちにもなります。

音楽に限らず、イラストなどのアートデジタル作品アイデアなどについても「権利」は近年重視されています。わたしたちは10年ほど前に比べても、著作物を「つくる側」「つかう側」になる機会が圧倒的に増えました。

もし子どもたちが著作権について聞いてきたら、親として、わかりやすく教えてあげられるようでありたいですね。

===========================
★おススメ記事★
【第86回】あえて学校に通わないという選択、「ホームスクーリング」の現場をちょっぴりレポート
【第67回】自宅学習でヤル気が出ない…そんなときは「ピア効果」のチカラを借りよう!
【第19回】【受験生応援!「集中力」が発揮できる室温って、いったい何度?】
===========================