ADHDと集中力の関係|過集中・不注意に悩む親のための対処ガイド
公開日:2025年6月30日
更新日:2025年6月30日

このコラムでは、ADHDの子どもの「集中できない」「気が散る」「やり過ぎて止まらない」といった悩みに向き合います。
ADHDの子どもに見られる「過集中」や「不注意」は、家庭での工夫で改善策が見つかります。理由と対処法を知って、子どもの可能性を伸ばす一歩を踏み出しましょう。
ADHDの子どもに見られる集中力の特徴とは?
ADHD(注意欠如・多動症)の子どもは、一般的な「集中できない」というイメージとは少し違った形で集中力に特徴が見られることがあります。
特に「過集中」「不注意」「注意力のムラ」といった特性は、学校生活や家庭での学習・行動に大きく影響します。ここでは、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
1. 過集中
ADHDの子どもには、強すぎる集中状態=「過集中」が見られることがあります。
興味のあることや好きなことに取り組んでいる時に、時間を忘れて夢中になり、周囲の声が聞こえなくなってしまうことも珍しくありません。
例えば、ゲームや工作、図鑑などに集中しすぎて、「トイレに行くのも忘れてしまう」「ごはんや寝る時間になっても切り替えられない」などがあります。
これは決して悪いことではありませんが、切り替えの難しさが生活リズムを乱したり、家族とのトラブルに発展することもあるため、周囲の理解と適切な対応が必要です。
2. 不注意
ADHDでよく見られるもう一つの特徴が、「不注意」の傾向です。
これは、物事に集中しにくく、注意があちこちにそれてしまう状態を指します。
例えば、「提出物を忘れる」「話を聞いていないように見える」「つい教科書を閉じてしまう」などの行動が見られることがあります。さらに、本人に悪気はないのに「また忘れたの?」「ちゃんと聞いてなかったの?」と叱られてしまいやすく、自信をなくしてしまうこともあります。
不注意はだらしなさや怠けではなく、脳の注意機能の特性によるものです。理解のある声かけや環境づくりが、不注意の特性を持つ子どもへのサポートにつながります。
3. 注意力のムラ
ADHDの子どもは、集中できる時とできない時の差が大きいのも特徴です。
「昨日はしっかり取り組めたのに、今日は同じことが全く手につかない…」というようなこともよくあります。
これは「やる気の問題」ではなく、その時の体調・環境・感情の揺れが大きく影響するためです。本人も「昨日はできたのに、なんで今日はできないんだろう…」と落ち込むこともあります。
このような注意力のムラに対しては、「いつも同じようにできることを期待しすぎない」「できたときにしっかり褒める」「その日の調子に合わせて無理のない声かけをする」といった柔軟な関わり方が大切です。
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なぜ集中できないのか? ADHDの脳の特性による5つの原因
ADHDの子どもが「集中できない」のは、単にやる気がないからでも、努力が足りないからでもありません。ADHDには、脳の情報処理や刺激への反応の仕方に独自の特性があるため、集中しにくい場面や状況が生まれやすくなります。
ここでは、ADHDの子どもが集中力を保ちにくい主な原因を5つ紹介します。
1. 興味が持てないと集中が続かない
ADHDの子どもは、「面白い」「やってみたい」と感じるものに強く引き込まれる一方で、興味がないものには極端に反応しづらいという傾向があります。
これは、脳の報酬系という仕組みが関係しており、達成感や面白さが感じられない作業に対しては、なかなか集中が続かないのです。
そのため、「勉強は嫌い…」「説明を聞くのが退屈…」などと感じた瞬間に、気が散ってしまったり、他のことに注意が移ったりすることがあります。「楽しくないことに取り組めない」のは、意志の弱さではなく、脳の反応の違いととらえることが大切です。
2. 周囲の刺激に敏感に反応してしまう
ADHDの子どもは、音・光・人の動き・においなど、外部からの刺激に対して過敏に反応しやすい傾向があります。
例えば、教室でのざわざわした声、机の上のカラフルな教材、廊下を歩く人の足音などは、本人にとっては気になって仕方がないのです。
このような刺激があると、「今やっていること」に注意を向け続けるのが難しくなり、気づけば意識がそれてしまっていた…という状態になりやすくなります。
ADHDの子どもにとって集中の妨げとなる要素が身の回りに多いほど、集中し続けることは困難になります。
3. 優先順位の切り替えが苦手
ADHDの子どもは、「今はこれをやろう」「次にこっちをやろう」といったタスクの切り替えや優先順位づけが苦手な傾向があります。
例えば「宿題をしなきゃ」と分かっていても、目の前の遊びや別のことに意識が向いたまま、行動を切り替えられずに時間が過ぎてしまうことがあります。
また、「始められない」「途中で投げ出してしまう」「終わらせられない」といった行動のブレも、この切り替えの難しさと関係しています。
何を・いつ・どうやるかを整理する力がうまく働きにくいため、本人にとっては日常の小さな行動すら難易度が高く感じられるのです。
4. 時間の感覚があいまいで「今」に集中しづらい
ADHDの子どもは、時間の流れや長さをつかむ感覚がぼんやりしていることがあります。「あと5分」「15分後」などの時間を頭の中でイメージするのが難しく、「今やらなきゃ」という意識を持ちづらくなるのです。
そのため、ダラダラと行動が続いてしまったり、「すぐやる」と言いながら先延ばしにしてしまうこともあります。「未来のこと」よりも「目の前のこと」に引っ張られやすいという傾向があり、これが集中力の持続に大きな影響を与えます。
5. 感情や気分に強く左右されやすい
ADHDの子どもは、感情の波が大きく、その時々の気分に集中力が大きく左右される傾向があります。
例えば、不安やイライラ、退屈、ワクワクといった気持ちが強く出ると、集中したくても気持ちのコントロールが難しくなり、うまく切り替えられないことがあります。
また、落ち込みや不安などのネガティブな感情が強いと、そもそも何かに取り組む意欲が湧かなくなってしまうこともあります。
「気分が乗らないと何もできない」のは、怠けているのではなく、感情の影響を強く受けやすい脳の特性によるものです。

「過集中」によって引き起こされる困りごととは?
ADHDの子どもに見られる「過集中」は、一見すると“集中できていて良いこと”のように思えるかもしれません。好きなことに熱中できる力は強みでもありますが、その集中があまりにも強くなり過ぎると、日常生活の中でさまざまな困りごとが生じてしまうこともあります。
ここでは、過集中によって起こりやすい具体的な困りごとを紹介します。
1. 周囲の声や状況に気づかない
過集中している時のADHDの子どもは、まるで“自分の世界に入り込んでいる”ような状態になることがあります。
例えば、周囲で誰かが声をかけても反応しなかったり、危険な場面にいても気づかないまま行動を続けてしまうこともあります。
また、親が「そろそろ終わりだよ」と声をかけても全く聞こえていない様子だったり、学校で先生の指示や注意を聞きそびれてしまうなど、周囲とのコミュニケーションが円滑にいかないこともあります。
2. 時間が過ぎていることに気づかない
ADHDの子どもが過集中している時、時間の感覚が完全に飛んでしまうことがあります。
「気づいたら何時間も経っていた」「ご飯の時間を過ぎていた」といったことが、日常的に起こりがちです。
これは本人にとっても困ることで、後から「やばい!怒られる…」と不安になったり、罪悪感を抱くこともあります。時間を区切ることが難しいという特性が、過集中時にはさらに顕著になるのです。
3. 切り替えがうまくできずパニックになりやすい
過集中から抜け出すことは、ADHDの子どもにとってとても難しいことです。
急に中断させられると、強いイライラや混乱、時にはパニックのような反応を見せることもあります。
例えば、「今すぐやめて!」「もう時間だから終わり!」といった声かけは、本人にとっては突然すぎて気持ちの切り替えが追いつかないのです。また、無理にやめさせようとすることで、かえって情緒が不安定になってしまうこともあります。
4. トイレや食事も忘れてしまう
夢中になるあまり、体の感覚すら忘れてしまうのがADHDの過集中の特徴です。
「お腹が空いた」「トイレに行きたい」といった感覚を感じていても、それを脇に置いて没頭し続けてしまうのです。
結果として、健康や生活リズムに悪影響が出ることもあるため、親や周囲の大人が声かけやサポートで気づかせてあげることが大切です。
5. 重要な予定や課題を飛ばしてしまう
過集中によって一つのことに熱中しすぎると、本来やるべき別のことを完全に忘れてしまうことがあります。
例えば、翌日の準備、提出物、約束していた用事など、重要なことが抜け落ちてしまうのです。
これは「サボっている」「いい加減な人」と誤解されがちですが、実際は“他の情報が頭に入らなくなっている”という脳の状態です。責めるのではなく、「どうすれば忘れずに済むか」という仕組みづくりが重要になります。

ADHDの子どもの集中力を上手に引き出す!保護者にできる5つの工夫
ADHDの子どもの集中力には「過集中」「不注意」「ムラ」といった特徴がありますが、環境や声かけを少し工夫するだけで、集中しやすい状態を引き出すことができます。
ポイントは、子ども本人の特性に合ったやり方を見つけてあげることです。ここでは、家庭で取り組みやすい5つの工夫をご紹介します。
1. 「始まりと終わり」を明確にする声かけ・タイマー活用
ADHDの子どもは、「今から何をするのか」「いつまでに終わるのか」が曖昧だと集中しづらくなります。
そこで、時間や区切りを“見える形”で伝えることがとても効果的です。
例えば、「これから10分だけ音読しようね」「タイマーが鳴ったら終わりだよ」といった声かけや、実際にタイマーを使って時間を設定することで、“集中しやすい枠”を作ることができます。このような時間を視覚化する取り組みは、過集中のブレーキにもなります。
2. 集中しやすい静かな環境を整える
ADHDの子どもにとって、学習環境の整備はとても大きいものです。
テレビの音、人の動き、カラフルな物が目に入るなどの要素があると、集中を保つのが難しくなるので、可能であれば、パーテーションで区切った静かな空間をつくる、机の上をシンプルに保つ、ノイズキャンセリングイヤホンを使うなど、環境を整えてあげると良いでしょう。
視覚的にも音的にも刺激が少ない方が、落ち着いて学習に取り組めるようになります。
3. 興味が持てることを入口にして学びへつなぐ
ADHDの子どもは、「やりたいこと」にはぐっと集中力を発揮します。
その特性を活かして、「好きなこと」「興味のあること」を学びのスタートにするのが効果的です。
例えば、「電車が好き」なら地図や時刻表を使った算数の問題にする、「動物が好き」なら図鑑を使って読み取りを練習するなど、“本人の好き”を勉強に橋渡しする工夫が有効です。
まずは「楽しそう」と感じられることが、集中への入り口になります。
4. こまめに休憩し、体を動かしてリセット
長時間の集中が難しい子どもにとって、定期的なリフレッシュが集中を保つ鍵になります。
30分勉強したら、5分間体を伸ばす、短い運動やジャンプを取り入れるなど、体を動かすことは気持ちの切り替えにもつながります。
「立ち歩き=集中できていない」と決めつけず、“動くこと”も切り替えには必要な時間であると理解してサポートすることで、本人も集中の波に乗りやすくなります。
5. 大人のポジティブな声かけで集中を“見える化”
ADHDの子どもは、自分が「今、集中できているのか」を客観的に把握しにくいことがあります。そこで周囲の大人が、子どもの集中できている場面を言葉で“見える化”してあげることが大切です。
例えば、「今の10分、すごく集中してたね」「さっきは自分から始められたね」といった具体的な内容で声かけをすることで、子どもは「自分でもできたんだ」と実感できます。
これが、次の集中への自信ややる気にもつながっていきます。

まとめ
ADHDの子どもの集中力には、過集中や不注意といった独特の特徴がありますが、正しく理解し、適切に関わることで力を発揮できる場面も増えていきます。
大切なのは、子どもの特性に合った環境づくりと、無理のないサポートです。焦らず少しずつ、家庭でできる工夫を積み重ねながら、子どもが「自分らしく集中できる力」を育んでいきましょう。
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