【第78回】人と比べない「自由進度学習」で、勉強嫌いの子がいなくなる!?


人と比べない「自由進度学習」で、勉強嫌いの子がいなくなる!?

みなさん、こんにちは! いよいよ、新しい学年がスタートしましたね。

突然ですが、みなさんは「ヘッドフォンで音楽を聴きながら授業を受ける」、「友だちと自由におしゃべりしながら課題を解く」と聞いて、どこの国の学校を想像しますか? 海外だと思われる方が多いかもしれませんが、実はこれ、日本のとある公立小学校で行われている「自由進度学習」という学習スタイルなんです。

「全員が」「同じ方法で」「一斉に」の弊害を解消

これまでの授業は、先生が指示した内容を「みんなが」「同じ方法で」「一斉に」行うというやり方でした。たしかに、授業を進める側からしたら効率がよいかもしれませんが、受ける生徒はどうでしょう? 理解が速い子にとってはヒマな時間ができてしまい、理解が遅い子にとっては授業についていけず、また他人と比べることで自信をなくして勉強から遠ざかってしまうという弊害がありました。

東京都の小金井市立前原小学校で行われている「自由進度学習」とは、生徒の個性を尊重して、方法を強制することなく自由なペースで学習する手法です。今年の2月には、こちらで教諭を務める蓑手章吾さんの著書『子どもが自ら学び出す! 自由進度学習のはじめかた』(学陽書房)が出たことでさらに注目を集めました。

みんなで受ける授業は最初の10分だけ

蓑手先生のインタビュー記事などでは、実際の授業の様子が紹介されています。
たとえば、算数の授業では、最初の10分間で先生がミニレッスン(教科書を使った一斉授業)をするそうです。みんなで受ける授業はここで終わり。その後の25分間は、ヘッドフォンで音楽を聴きながらプリントの問題を解く子がいたり、タブレットの動画で学ぶ子がいたり、先生にわからなかった箇所を聞き直す子がいたり、「各自が自分で決めた方法で学習を進めていきます。

また、机の場所も自由です。友だちと学習したい子は机を並べて、一人で集中したい子は教室の隅で壁に机をつけている子もいるそうです。先生は席を巡回しながら、個別に生徒の質問に答えたり、つまづいている子を導いたりします。

そして、最後の10分間は大切な「振り返りの時間」。「プリントを2枚やる目標だったのに1枚半しかできなかった」「ここが分からなかった」など、課題を洗い出し「なぜできなかったか」と自分で考えて、次の授業に活かしていくそうです。あわせて、「次回はこれをここまでやる」というめやすを定めることで、自主的な学習態度もストレスなく身につくと言います。

そこにはもちろん先生のアドバイスも入りますが、重要なのは「子どもの自己解決力」が育まれるということ。これにより、勉強ができなかった子も、「わからない場合はどうしたらよいのかな」などを考えられるようになり、結果的に平均点もアップしたそうです。また、この学習スタイルには他人との比較や競争がないため、勉強で自信を失うことも少ないそうです。

家での勉強にも取り入れられる

今はまだ局地的な取り組みですが、家庭での過ごし方にも「自由進度学習」の考えを取り入れることはできそうです。

たとえば、勉強する場所や時間帯はお子さんに決めてもらう。また、学習方法についても同様。ネットの動画で学習に関係することを見てからでも、テレビをつけながらでも、お菓子を食べながらでも、お子さんの自由にさせるけど――学習前後の「目標設定」と「振り返り」だけは必ず行う。そういったことで、お子さんの学習への意欲が変わることがあるかもしれません。

ただ、急に「自分の好きなやり方で」と言われても、困ってしまうお子さんが多いでしょう。そんなときは家庭教師の先生と相談しながら、ぜひ本人にあった学習スタイルを見つけてみてくださいね。

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