【第42回】どっぷり笑えて、生きる知恵まで身に付く「新作落語」3選

【第42回】どっぷり笑えて、生きる知恵まで身に付く「新作落語」3選

みなさん、こんにちは! 最近すっかり落語にハマってしまい、気を抜くと「私は」のつもりが「あっしは」と口走っているヤスコです。

先日7月2日、日本のエンタメ界に大きなニュースが駆け巡りました。テレビ番組「笑点」の名司会者だった桂歌丸さんの永眠。御年81歳でした。

シニカルな時事ネタで笑いをとる一方で、笑点のメンバーからは、「ミイラ」「骸骨」などと散々いじり倒されてきた歌丸師匠でしたが、50年間も同番組のレギュラーとして活躍した師匠のすごいところは、さまざまな病気と闘って2016年に同番組を“勇退”したその後にありました。鼻に酸素チューブを通しながら高座(舞台)で客席をわかせるようすは、まさに「芸人魂」。エンタテイメント界のトップランナーとしての情熱や気迫にあふれていました。その話芸はまさに国宝級。子どもからオトナまで笑わせてしまう力があります。

ところで、みなさんはふだん落語を聞きますか?

「落語なんて昔の話でしょ」と食わず嫌いだとしたら、もったいない! 実は落語には、江戸~明治時代にできた「古典落語」とは別に、現代の生活をネタにした「新作落語」というジャンルもあるんです。主人公には、スマホ中毒の大学生、初恋の相手を忘れられないおじいさん、動物園の動物まで、思わず応援したくなるような魅力的な人物がたくさん登場します。そう、まるでコントや漫才を楽しむ感覚で、聞くことができるのです。

気軽につまめるエンタメながら、国宝級の話芸や、学校では教えてくれない「生きる知恵」がぎっしり。図書館などでもCDやDVDが無料で借りられるので「テレビを見ながら食事」「スマホをいじりながら暇つぶし」の代わりに、一度聞いてみませんか?

でも、何から聞けばいいの?というあなたへ。

今日はヤスコが実際に聞いた作品の中から、子どもと大人が一緒に笑えるオススメ落語を「新作」「古典」まじえて3作紹介しますね。

1.財政難の動物園を救え!「任侠流山動物園」

ライオンやトラのような人気動物がいないせいで、客足が遠のき経営難におちいった架空の動物園が舞台。「このままでは自分たちもクビになってしまう!」と危惧した当の動物たちが「とある計画」を実行するために一致団結します。

園長がブタの豚次に「県からの補助金が打ち切られて財政難」とこぼすシーンなど、オトナにとってリアルな要素もありつつ、子どもにとっては、ニワトリのチャボ子や豚次の元兄貴分・虎夫の「なりきり演技」がツボにはまるはず!

“任侠”というタイトル通り、動物同士のコミュニケーションから「他人に何かを頼むときの礼儀」や「協力し合ってピンチを乗り越える姿勢」など、学べるところも多そうです。(ストーリーはちょっと大げさですけどね:笑)

2.ケチな節約生活、ここに極まれり!「始末の極意」

「せこい!」としか言いようのない生活の知恵(悪知恵!?)も、ここまでくると職人技かもしれない。そんな自他ともに認める「ケチ」な大家さんが登場します。

たとえば、隣から流れてくるウナギ屋の「匂い」をおかずにご飯を食べていたら、ウナギ屋から「匂いの分だけ代金を払え」と要求される。そこで「びた一文払いたくない」大家さんがとった行動は……?

タダで青菜を手に入れる方法、扇子を孫の代までもたせる方法など、思わず苦笑いしてしまいそうな「せこ技」のオンパレードですが、そのちゃっかりした賢さは「サザエさんのカツオくん」に通じる憎めなさがあります。

大家さんのアイデアは決して褒められたものではありませんが、ビジネスや暮らしの工夫とはこういう「とんち」から生まれるのかもしれませんね。

3.今度の習い事は、あくび?「あくび指南」

こちらは、『おやこ寄席』(小学館)というCDブックで、小学校低学年からでも楽しめそうな音源も収録されています(「あくびのおけいこ」)。

習い事といえば、ピアノや水泳などを思い浮かべるかもしれませんが、主人公の友人・熊さんがこれから習いに行くのは、眠いときに出るあの「あくび」。なんだか胡散臭いお師匠さん曰く、あくびには「いいあくび」と「悪いあくび(駄あくび)」があるとのこと。かくして熊さんは、「夏の船でするあくび」「ぬるくて退屈なお風呂で出るあくび」などの稽古を一生懸命つけてもらうのですが、当然うまくいくはずもなく――。

師匠と熊さんのまぬけなやり取りが笑いを誘います。しかし、そんなダメな熊さんを、文句を言いつつもかたわらで見守る主人公との間には、おだやかな友情を感じたりして。

落語の魅力には、「失敗」を笑い飛ばせるおおらかさや、一般的によしとされない性格(短気、忘れっぽい、内気)の登場人物が活躍できる明るさにもあります。

落語は「オトナも子どもも楽しめるお笑い」であると同時に、生きる知恵がつまった「栄養ドリンク」なんです。1つの演目が、30分~1時間で終わることが多いので、ぜひおやつ感覚でつまみ食いしてみてくださいね。

慣れてきたという方には、冒頭で紹介した故・桂歌丸師匠の左甚五郎シリーズもおすすめですよ! 左甚五郎は、江戸時代のレジェンドとも言われた彫刻職人。今ごろは師匠と二人、天国で再会して、落語談議に花を咲かせていることでしょうね。

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