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【第22回】「昼寝クラブ」に「みんいく」!? 気持ちよく眠るだけの成績アップ法

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第22回 「昼寝クラブ」に「みんいく」!? 気持ちよく眠るだけの成績アップ法

「寝る子は育つ」と言うけれど――。先日、息子の担任の先生から「お宅のお子さんは、授業中も机につっぷして居眠りばかり」と告げられて、大ショックのヤスコです。

みなさんのお子さんはいかがですか?

今年2月、あるアメリカの経済新聞でニュースになっていたのですが、アメリカの一部の高校では、生徒が集まって静かに休む「昼寝クラブ」というものがあるそうですね。ソファやお茶が用意されていたり、さらにはエステ施設にありそうな近未来的な“仮眠用カプセル”の中でうたた寝ができる学校も。

さすがはヘルス&メンタルケア王国! と、感心してしまったヤスコですが、実は日本人こそ「睡眠」には気をつかう必要があるそうなんです。特に「いつもダルそうに見える」「無気力」「朝、学校に行くのを嫌がる(不登校)」というお子さんには、知ってほしいお話です。

■日本人の睡眠時間は、18か国中ワースト2

OECD(経済協力開発機構)が世界の国々における青年、成人(15歳~64歳)の平均睡眠時間を調査したところによると、アメリカ、インド、スペイン、ドイツ、イギリスなど18か国のうち、日本人の1日の睡眠時間はなんとワースト2。約470分(約7.8時間)とのことでした。

ちなみにお隣の中国は、約530分以上(約8.8時間)。たかが1時間されど1時間。毎日のことだから、その差は大きいですよね。

ヤスコが実際に確認できたのは2006年のデータでしたが、みなさんもご存知の通り、ここ十数年でインターネットは格段にエンタテイメント性が増しました。見たいテレビがなくなった深夜でも、暗い部屋でパソコンやスマホ相手に夜更かしをする「新・ホタル族」も確実に増えているはずです。睡眠時間は、もっと短くなっているのではないでしょうか。

画面から発せられるブルーライトも睡眠を妨げるとされていて、その質の低下も危ぶまれています。大人にとっても子どもにとっても、「睡眠不足」は深刻な現代病となりつつあります。

■不登校にも深くかかわる「睡眠習慣」

そんな中、今まで「心の問題」とされてきた「不登校」にも、睡眠が関わっていると睨んでいる研究者たちもいます。熊本大学大学院の名誉教授・三池輝久さんもそのひとりです。

三池さんに関わる研修の資料やインタビューを読むと、
・朝、学校に行くのを嫌がる
・友だちとのトラブルが多い
・ボーッとして無気力
・理由のない攻撃性
・視線が合わない
などの子は、脳の疲労が引き起こす「小児慢性疲労症候群」の可能性が高いということ。

症状としては…
・体力の低下、体回復の遅さ
・睡眠トラブル
・頭痛、関節痛、腹痛、吐き気
・認知脳機能の低下
・自律神経症状
などがあるそうです。

そして、脳が疲れる大きな要因が「睡眠の乱れ」なんだとか。この症状は1日よく眠るぐらいでは回復せず、一般的な医学検査では異常が出ないそうです。

その子の生活の根っこの部分から「睡眠」を見直せば、状態が改善することがあるというのが三池さんの主張です。

「食育」の次は、「みんいく」ブーム!?

実は、子どもたちの睡眠クオリティを向上させる「みんいく(睡眠教育=眠育)」の取り組みは、すでに各地で行われています。

兵庫県では、全校生徒が昼食後の10分間に軽い昼寝をする「シエスタ」を取り入れた中学校があります。企画したのは生徒会。昼寝は机に突っ伏す形で、その間オルゴールのBGMが流れるそうですよ。(なんかもう、そのまま2時間ぐらい爆睡してしまいそうですが)

中でも効果を実証して話題となったのが、大阪にある「堺市立三原台中学校」。
数年前までは、不登校率が全校生徒の約5%(全国平均の約2倍)という苦しい状況に追いこまれていました。万策尽きて困り果てた先生たちですが、前述の三池さんを監修とした「みんいく」ハンドブックを作り、睡眠の大切さや質の高い睡眠のとり方を教えたところ、1年間で不登校率がなんと約32%改善したそうです。

具体的な数字に置きかえると……仮に全校生徒が500人だったとして、不登校だったのは25人。そこから8人減って、17人になったということですね。これは年々不登校の子が増えている昨今、とても大きな成果ではないでしょうか。

部活、定期テスト、受験を成功させるカギは「睡魔のコントロール」

それにしても「みんいく」って、いったいどんなことをするの?今年8月に発売されたばかりの『「みんいく」ハンドブック』(学事出版)をのぞいてみましょう。このシリーズは、小学校低学年用、高学年用、中学生用に分かれているのですが、コンテンツは次のような構成です。

・中学1年
なぜ9時間睡眠が大切なの?
脳が疲れやすい生活
様々な動物の睡眠
中学1年生の生活 など

・中学2年
心の体力
睡眠の「質・量・タイミング」
テレビ・ゲーム・スマートフォン・パソコン
光を制するものは睡眠を制する
理想のマットレス
中学2年生の生活 など

・中学3年生
 寝だめ・昼寝の方法
 レム睡眠・ノンレム睡眠
 一日の体温変化
 良い眠りの環境づくり
 中学2年生の生活 など

遊んでばかりいた小学生と違い、中学生は「部活」や「定期試験」、そして「高校受験」などのタスクが待っています。「部活で疲れて、授業中に眠くなる」「どうしても、テスト勉強で一夜漬けしなくちゃ!」「早起きして受験勉強できたら、もう少し点数が上がるのに…」など、睡魔と闘うシーンが目白押しです。

「質の高い睡眠をとる」=「気持ちよく眠る」だけで、勉強の基礎体力が自然とアップするのですから、試してみない手はありませんね。いっそのこと大人も一緒になって取り組めば、「仕事の効率が上がる」、「いいアイデアが浮かぶ」「ウツっぽさが解消される」などうれしいメリットを受け取れるかも!

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